俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

カウリスマキのあかり・3夜

もう行けないと思っていたが、都合つけてしまった。アキ・カウリスマキのレイトショー、これで自分は仕舞いの「浮き雲」。会社を出たら雨、稲びかりに照らされ、渋谷の街を突っ切った。サンダルの中まで、しずくがたれる。それが帰るころには、おおかたの路面は乾いていた。すげー。

アキ・カウリスマキ「浮き雲」

1996年公開作品、96分。原題:Kauas pilvet karkaavat、英題:DRIFTING CLOUDS。前作「過去のない男」・最新作「街のあかり」 とつながる“敗者三部作”の第一作。

真夜中の虹/浮き雲 [DVD]

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「浮き雲」というと、まず思い出すのが林芙美子原作・成瀬巳喜男監督の「浮雲」だが、実際そこから名前を採ったらしい。「街のあかり」はチャップリンだし、ほんとに映画を愛してるのね。
カウリスマキの「浮き雲」は、とてもよかった。レストラン給仕長の妻、路面電車運転手の夫。仕事を終えた妻が、夫の運転する路面電車に乗るシーンの暖かさよ。乗り込む前から、妻の口の端がきゅっと上がって笑みこぼれる。ほとんど客のいないガラ空きの車内で、妻は夫のすぐ後ろに寄り添い立つ。セリフは一つもないが、この若くもない夫婦が愛情でつながっているのが、よくわかるんだ。で、このあと二人は失職しちゃうんだけど。
ラスト、自分たちで立ち上げたレストランの初日。ファンタジーであろうが、これでいいのです。つらいときには、夢と希望と「明日」が必要なのだから。