俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

萌えだけでは

はい自宅。午前の1時間に家事1週間分をかたづけ、きっちり昼を食べてから表参道へ。スパイラルホールで観劇は、松尾スズキ×大竹しのぶの「蛇よ!」以来。今日の芝居は、劇団ダンダンブエノで「砂利」。
坂東三津五郎が初の小劇場出演、若手で注目されている本谷有希子倉持裕が脚本・演出で、ちょっと話題になったもの。チラシの三津五郎さんがかっこよかったから、ついチケットとっちゃった。
内容。松尾スズキの「悪霊」とかぶった。片桐はいり、一人勝ち。詳しくは下記参照 (ネタばれ含む)。

劇団ダンダンブエノ 双六公演「砂利」

【脚本】本谷有希子
【演出】倉持裕
【音楽】ハンバートハンバート
【出演】坂東三津五郎(蓮見田:はすみだ) 田中美里(有里:ゆうり)  片桐はいり(際:きわ) 酒井敏也(小森橋:こもりばし) 山西惇(戸所:とどころ) 近藤芳正(孝生:たかお)

7/22 (日)、14:00開演、於・青山スパイラルホール。上演時間は2時間10分。
「ダンダンブエノ」は主宰の近藤芳正と、酒井敏也、山西惇の3人がレギュラーのユニット。公演ごとにゲスト脚本、演出、役者を呼ぶスタイル。
今回の主役は、初・小劇場の坂東三津五郎。脚本、演出には、いま売り出し中の若手、本谷有希子倉持裕。本谷さんは、公開中の映画「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の原作者だ。

頭のいい脚本に頭のいい演出で、真面目な役者が演じた舞台。
坂東三津五郎は、役を考えすぎてると思う。抜き身で演じた片桐はいりの一人勝ちだった。明らかに、はいりさんの登場から舞台に血が通いはじめたもの。はいりさんも演技上の計算はしただろうし、皆さんうまいんだけれど、ねえ。脚本や演出も含めて、生煮えのカレーみたいなところがある。

脚本を書いた本谷さんの芝居は、舞台版「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(再演)、「乱暴と待機」だけ観ているが、前の2作と比べて、ダントツに松尾スズキだった。松尾さんの「悪霊」と、すごくかぶる。
自分が先に「悪霊」を観ていたせいかもしれない。今回の「砂利」から観た人は、全然別モノだと言うかもしれない。あらすじは全然ちがうし、結末も異なっている。でも、似てるなーと思っちゃったんだから、しかたがない。
かぶったところ。
いじめっ子/いじめられっ子、兄弟の相克、親の支配、美醜、不義の子、旧家の金持ち。
「この設定、悪霊だ」「これも悪霊」「これまた悪霊」「さるまた悪霊」、全部悪霊じみて見えてくる。女(田中美里)が、内縁の夫(坂東三津五郎)にむかって「蓮見田ちゃん!」「○○っしょ? ○○っしょ?」と言うあたりは、松尾スズキのTVコント「恋は余計なお世話」の大竹しのぶ*1みたい。相手を名字でちゃん付けとか、特に松尾さんの専売特許ではないんだけれど、「悪霊」の影響で、セリフにまで松尾臭を感じてしまう。前の2作では、別になんとも思わなかったんだけどな〜。

内容も、まあ……こういうの、飽きちゃった。もっと若いとき、芝居を観始めたころだったら、素直に「すごい」と思ったんだろうなあ。でも、松尾スズキ長塚圭史なんかを、先に観ちゃってるからね。いつかきた道、以上に感じるものがなかった。
痛い人を痛いまま書いても、そんだけの話だ。理屈をつきぬけたものが観たい。設定ではなく、物語が観たいのだ。頭で考えられた脚本は頭で読み解ける。「萌え漫画」みたいな芝居だった。
あと、本谷作品で苦手なのが「上から目線」。同性のいやらしさ。

ちょっと面白いのが、蓮見田兄弟の母親の存在。亡くなった父親については、何度も言及があるのだが (死んでも兄弟を支配している)、母親はすっきりいませんでしたねー。こういうところにワキの甘さを感じる自分は、やっぱり厳しすぎるかしら。

*1:「恋は余計なお世話 〜深津ちゃん何言ってるの しのぶ全然わからないスペシャル〜」…2001年1月3日、CX系で放送のTVコント番組。松尾スズキ大竹しのぶが駆け落ち者で、お互いに「松尾ちゃん」「大竹ちゃん」と呼び合う仲。脚本・演出・出演:松尾スズキ、他出演:大竹しのぶ深津絵里宮藤官九郎阿部サダヲ