俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

2連ちゃん その1

蜷川芝居の「オレステス」初めて観たー。ギリシャ悲劇って、昼ドラだよね。

ギリシャ悲劇「オレステス

【原作脚本】エウリピデス
【翻訳】山形治江
【演出】蜷川幸雄
【出演】藤原竜也 中嶋朋子 北村有起哉 香寿たつき 吉田鋼太郎 瑳川哲朗 ほか(アポロンの声:寺泉憲

9/23 (土)、13:00開演、於・Bunkamura シアターコクーン。上演は約2時間20分。
ギリシャ悲劇×蜷川幸雄×藤原竜也です。作者はギリシャ三大悲劇詩人の一人、エウリピデスね。「アガメムノン」「エレクトラ」「オレステス」(すべて共通の親子姉弟の話)より、最終話(とでもいうのかな)です。それぞれ有名な話で、概略程度は知っていたけど、ちゃんと観るのは初めて。
ギリシャ悲劇って、昼ドラだ。人間のまじりっ気なしの欲望がぶつかり合い、神や法を持ち出して自説を補強、エゴまる出し。すごい。さすが神さまも不倫略奪親殺しをするギリシャ神話に材をとっているだけあるわ。

オレステス藤原竜也)と、その親友ピュラディス(北村有起哉)の関係が、どうにもBL風。男男恋愛を至高と考えた古代ギリシャっぽいと思うべきか、単に蜷川さんの趣味なのか分からん。北村さん、メタマクのグレコに続いて奉仕役で、妙にさわやか君です。さらにすごいと思ったのは、親友ピュラディスに、姉エレクトラを与える約束をオレステスたちがしていたこと。これって、姉を通じて、男二人がつながるということ? 馴染の妓を共有する男の感覚、とでも言いましょうか。共通の一人の女を愛することによって、二人の男の絆も強まるという、潜在的同性愛行為です。
エレクトラかわいそー、と思ったのは束の間、ちょっと待った。エレクトラにしたら、ピュラディスを夫にすることで、愛する弟オレステスとの絆がさらに強まる。ピュラディスを介して、弟とつながるわけですよ。潜在的近親相姦。えろい! 愛する父アガメムノンを、間夫とともに謀殺した母を憎み、弟オレステスに「あの女は父の仇」と、母親殺しをさせたエレクトラ最強です。物語冒頭でも、弟は母親殺しの罪の意識に狂乱するが、姉は「私たちは悪くない! アポロン神の命令よ!」と正義を主張し、周りを呪いたおして反省の色なし。いやほんと女は強いね。エレクトラの一人勝ちに決まり。

舞台奥に大きく「×」のされた扉。雨(土砂降り含む)に本水を使った演出は、その轟音でセリフが聴きにくいことが何度かあった。本水はここぞという場面にとっておき、映像と音響で大半をすます、というのはだめだったのだろうか。コロス(群衆、合唱隊)は、声がそろわず、魅力が半減。これも聴きとりにくかった。
役者たちの、大上段にかまえた芝居が、少々こっぱずかしい。ポーズをとって「ああ、なんという、ことだぁー!」みたいなセリフを、腹式呼吸の美声で言うんだもん。蜷川芝居は2005年の「ロミオとジュリエット」に続いて2度目だが、いつもこうなのかな。前回はシェイクスピアだからと、あまり気にならなかったけど、うーむ。悠長で麗々しい原典のセリフを守るには、恥ずかしいくらいの演技がちょうどいいのかしら。保留にしときます。
最後、死刑の姉弟たちが、最後の大逆転を賭け、失敗したらみんな道連れ計画の実行中に、天からアポロンの神託が降ってくる。声のみの神託は、バラエティのナレーションみたいで、重苦しい舞台とのギャップが面白かった。幕切れに空から降ってきた紙は、アメリカ・レバノンイスラエルパレスチナ自治区の、国旗と国歌の印刷らしい。ロビーに見本が飾られておりました。