俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

映画のはしご

昨日は観劇で今日は映画。しかも2本はしご。てんこもりの土日。
1本目はマキノ雅彦監督「寝ずの番」、2本目は「プロデューサーズ」。「寝ずの番」は、劇場で予告編を観た際、なつかしいザッツ日本映画のかほりを感じて、よっしゃ行こう! となったもの。監督のマキノ雅彦は、俳優の津川雅彦ね。本作が映画監督第一作目で、映画を撮るときは「マキノ」姓を名乗るんだとか。日本映画の父・マキノ省三が祖父、映画監督のマキノ雅弘が叔父だったなんて知らなかったよ。その偉大な「マキノ」姓を継いで、というのに、おおーっと思ったわけです。
プロデューサーズ」は、ブロードウェイ・ミュージカルを映画化したもの。昨年、その日本版(日本人キャスト)ミュージカルを観た友達が面白い! と太鼓判を押していたので、これも迷わず前売券を購入。話を聞いたときは、舞台のチケットとらなかったの悔やんだもんね。さあここまでで十分長い。個々の感想はまた後日。続くのかよ!

寝ずの番

映画のはしご、一段目。先日観た「THE有頂天ホテル」で流れた予告編が、昔なつかしザッツ日本映画な絵ヅラで、監督「マキノ」雅彦というのに惹かれた一本。
原作は中島らもの同名小説。上方落語の名人師匠に始まる葬式顛末で、だから「寝ずの番」を弟子やら身内やらがするわけです。題材・監督の経歴からして、伊丹十三の「お葬式」を思い出すけれど、津川さんはね、やっぱり俳優がいいかも。
観客は、8割がた中高年のかたがた。初老の夫婦連れが多し。「Allways 三丁目の夕日」を観た層と、きっと重なっていると思う。ノスタルジアが劇場に足を運ばせるのね〜。だいたい、今は葬式を斎場で営む家が増えていると思うが、映画では純和風の一軒家、襖をはずして二間をつなげた畳の部屋で、精進落としの寝ずの番。男どもは座卓で飲み明かし、嫁たちは台所でおさんどん。「あー昔の葬式はこんなんだったね」と思った。しかし故人の思い出話でえんえん繋ぐのは、ちときつい。ところどころ笑って、ときどき眠くて、たわいもない「まあこんなとこ」な映画でした。キャストはよかったですよー。皆さん、ことばがきれいで柔らかでした。岸部一徳さんはいつみても素敵。金髪の落語家・橋枝を演じた木下ほうか さんも、独特の空気があって目をひきます。題字が緒方拳だったのと、短髪の中井貴一に専属ヘアメイクがついていたというのが一番の驚き (最後のクレジットで確認)。

プロデューサーズ

ブロードウェイ・ミュージカルの映画化。とはいえ、もともと1968年公開の映画をミュージカル化したのを、映画化したものである。その筋では有名なパロディ大家、メル・ブルックスの初監督作品(脚本も同人)が、同人によりミュージカル化、さらに同人により再映画化となったそう。ややこしいね。
昨年、舞台版の来日公演・日本人キャスト公演の両方があり、日本版を観た友達から評判を聞いていたので、この映画は絶対観たかった。うん、面白かった! 昨年、舞台版をスルーしたのを後悔しきり。

かなり往年のMGM映画を意識・リスペクトしたつくりと見受けた。ほんのちょっとしか、MGMを観ていない自分でもそう思ったくらいだから、メル・ブルックス本人は、かなりMGMが大好きなんだろうなあ。このパロは、愛情がないとできない!
同行の知人は、「メルの気持ちは分かるけれども、昔のMGMは、もっと大物ズラリで、もっとゴージャスだった」と悶えていたが、それはしかたがない。だってMGMは特別だもの。フレッド・アステアジーン・ケリー、「雨に唄えば」「巴里のアメリカ人」「バンド・ワゴン」「オズの魔法使い」「アニーよ銃をとれ」……。現状でかなうわけないです。好きなもののパロをつくるメルは、同人作家みたい。他のメル作品で有名どころは「新サイコ」「ヤング・フランケンシュタイン」など。

映画で一番のお気に入りは「内縁の助手」。最高! 日本版キャストでは、岡幸二郎さんがやった役なのかしらん? ゲイの描き方は、30年も前から万国共通なのね。舞台版キャストをそのまま使った映画だが、唯一、いや二人、金髪白痴美女のウーラと、ヒトラー大好き男のフランツが新キャスト。どちらもいい。ウーラ役のユマ・サーマン、よくやりました! ウーラがスウェーデン出身・性的に奔放との設定は、スウェーデン=フリーセックス、のイメージのせい? その他ナチスユダヤ、ゲイなどの人種ネタ、社会ネタのオンパレードだけれど、それをうまく料理している。主人公二人の“プロデューサーズ”がユダヤ・ネームだったとは気づかなかったわ (「シカゴ発 映画の精神医学」HP、2006年4月13日付記事で知りました)。ユダヤ系の2人が「春の日のヒトラー」を上演するのよ。すごいわー。

映画が終わっても、最後まで席をお立ちになりませんように。最後の最後まで楽しめるようになっています。映画版のヒットで、舞台再演が決まるといいなあ。