俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

こういうのには弱いのです

NYLON100℃ 28th SESSION「カラフルメリィでオハヨ 〜いつもの軽い致命傷の朝〜」

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:みのすけ 犬山イヌコ 三宅弘城 大倉孝二 峯村リエ 廣川三憲 村岡希美 安澤千草 喜安浩平 植木夏十 眼鏡太郎 廻飛雄/馬渕英俚可三上市朗 小松和重 市川しんぺー山崎一
【第一幕】1時間45分/休憩10分/【第二幕】1時間05分 / 終演17:00

4/22(土)14:00開演、於・下北沢本多劇場。休憩10分をはさんでの2幕もので、劇場の貼紙には終演17時とあったが、実際に劇場を出たのは17:20すぎ。
とてもいい舞台だった。
作・演出のKERAさんは、今まで苦手意識が強く(過去2回観た舞台がイマイチだった)敬遠していたのだが、この2月の「労働者M」がよかったので、友達のチケットを引き取ったもの。声をかけてくれた友達に感謝!
内容に触れる前に、音響照明映像など。
さすが元・有頂天、KERAさんの音楽の使い方は抜群にいい。最近、ようやく舞台での音楽の重要性に気づきました。今まで無意識だったけれど、音楽が合っている舞台は記憶に残りますね。照明もほどよく、KERAさんの舞台はほんとに緻密。オープニング映像もかっこよかった。美術セットも利用して見せる作りが面白い。これって、KERAファンの方には「何を今さら」な感想かもしれませんね。役者陣もそろってよかったです。

「カラフルメリィ〜」は劇団健康時代の1988年に初演、脚本を大幅に改訂して1991年再演、さらにNYLON100℃で1997年再々演。今回は9年ぶり4度目の再演となる。KERAさんの父の死が反映された「唯一の私戯曲」。という前情報だけは知っていたが、こんなにしみじみとさせられるとは思わなかったよ。泣いた。
ふつうの家庭のふつうの話。どの家にあってもおかしくない。頭のねじが飛んでいく祖父とその家族、そして浜辺の病院。家族の物語って、(難病もの以外は) 弱いのよー。祖父(山崎一)が、階段の手すりに頭をはさんで抜けられなくなる場面。父(祖父の息子・大倉孝二)が、頭をもげそうに何度もひっぱり、ついと離れて顔を覆う。苛立ちと悲しみがせつない。病院仲間の、櫛の歯をひくようになくなるところなども、思い出すだけで涙が出てくる。これが、ただの人間の生なのだなあ。
すでに正確な歌詞は忘れてしまったが、「100年後にはもういない、いつか死ぬ、きっと死ぬ〜♪」というのを肯定的に歌っているのに、非常に共感した。ただ生きていくだけ、次はいるが同じこと、みんな流れ流れて生も死もいっしょ、それでいいじゃないかただの人間なのだから。今現在の自分の死生観は「方丈記」なのだが、同じだわ。やられた。
重い題材を、笑いで全編いろどっている。つらく悲しいほどに笑いは必要だ。そのあたりの感覚も好き。投げるのでなく、笑い飛ばす。観に来てよかった〜。
今、改めてチラシを見ると、大倉孝二の父、峯村リエの母、馬渕英俚可の娘の3人が1枚におさまる写真がある。同じちゃぶ台を囲みながら、視線は交叉することがない。こんなところまで気を使っているのね。
最後にリンク。
 ●1991年再演時のKERAさんの挨拶文(「ぱちーの」HPより)
 ●みのすけインタビュー(内容紹介、作品背景。「e+ Theatrix! Pick Up」より)
 ●KERA&みのすけインタビュー(「e+ Theatrix! Pick Up」より)
 ●公演案内(チラシ写真掲載。「シリーウォーク」HPより)